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私は椅子に座っていた、それだけであった。
何も特別なことはしていない。
外には太陽が輝き、子供たちのはしゃぎ声が聞こえる。
私から、外の“事象”へ影響を与えることはない。
だが、“事象”はそこにいる。あらゆるところにいるのであった。
天井に沿って、椅子の下にまとわりついて、それは白い線としてそこに“いた”。
ただ存在していた。誰も気づかないが、それはいるのだ。
存在を主張することはなく、気づいてもらう努力をすることはない。
それは人間の微笑みのようなものであり、涙のようなものであった。
神秘的であるが、ごく当たり前に実存しているだけだ。
ただ不幸なことに、私はそれの実存に気づいたのであった。
瞬間に、それは黒く、膨れ上がり、腐敗臭を発するようになった。
私はまるで巨大な生き物の腹の中にいる気分になった。
消化しかけた肉が悪臭を放ち、肉壁には赤い筋が浮き出し、鼓動していた。
そこらじゅうに臭いが充満していた。
私は逃げ出したいと思ったが、それらは執拗に私にまとわりついた。
酷い吐き気が私を襲った、その吐き気も実存しているだけのものであった。
突然現れたわけではない、それは常に、私と一緒にいたものであった。
耐えられない、と私は思った。けれども、どうすることもできなかった。
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