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単なる自己満足、つうか気に入ってないけどね、難しそうにしてみただけ、模試前日になにしてるんだが…
実在する事3
カフェの隅の席に座り、コーヒーを頼んだ。やつから逃れられたらしい。
人ごみもこういうときにはいい。
ウェイターがコーヒーを持ってきた。一緒に大輪のサルスベリの花も持ってきた。今一番見たくないものだ。
なんのつもりだと私は聞いた。さぞかし凶悪な顔をしていたのだろう。若いウェイターはおずおずと言った。「あちらのお客様からです。」
手の先を見ると、一気に胃酸が込み上げてきた。
ああ、やつだ。逃れるはずもなかった。
私の肉体だ、あれは私なんだ。
精神だけになれば自由になれるなんて、考えたわたしが浅はかだった。
やつの形は私のもともととは違っていたが、自分だとわかった。そして黒髪で目がギラギラしている男の姿は。
ああ、死神のものだ。
そして、またどうしょうもなく吐き気が襲ってくる。サルスベリの匂いが立ち込める。
私はまだ死にたくないんだ。実存していたい。
「死神よ、見逃してくれ。」
「ダメだ。お前の存在はリアルじゃない。」
「どうしてだ、私はここにいる。」
「それはお前じゃない。この世界は何一つリアルじゃない。」
「違う。私は実体だ、コーヒーだって飲めるからリアルだ。」
そういって私はカップに口付けた。
「言っただろ、何一つリアルじゃないと。」
死神がそういうと、私のカップは真っ赤な花びらになって散っていった。ああ、腐った匂いがする。
「こっちが現実だ。受け入れろ。」
死神の体は膨れあがり、肉の固まりになった。それはやがてばらばらになって行き、ミンチになった。混ぜられ、肉まんになった。私の愛した女がそれを食べている。
ああ、そうだ、私は豚だ。そうか、肉まんになったのか。彼女が食べているのならそれもいいか。そう思うと意識がまどろんで行き、世界は真っ赤な花びらで溢れた。
偽りの花め、
おまえの纏う美しさは彼女そのもの。
紫微の花め、
おまえの纏う色は血そのもの。
死神め、
おまえの纏う漆黒だけはリアルそのもの。
おわり
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